音声再販「朗読・月のベッドでおやすみ」
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個人依頼にて再販可をいただいた音声になります! 物語を朗読いたしました。 ・ファイル名 hirame_217736.mp3 ・収録時間 9分53秒 ・マイク 通常マイク (個人依頼についてはこちらのブログを参照くださいませ! http://monobluehirame.blog.fc2.com/blog-entry-458.html )
台本一部抜粋
◆登場人物 夏月(なつき)・・・兄。28歳。真面目で落ち着いた性格。 春月(はづき)・・・弟。14歳。やんちゃでいたずらっ子。 「おかえり、なっちゃん」 その夜、春月は僕の部屋にいた。僕の留守中に勝手に入って、くつろいでいた。 手元にはプリンの容器。プラスチックのスプーンをくわえ、首にタオルをぶらさげている。彼は家主の許可なく冷蔵庫をあさり、ミルクプリンを食べた上に風呂まで使ったようだ。僕のTシャツとハーフパンツ姿で寝転がっている弟を前に、僕は脱力するしかなかった。 「なにボーッとしてんの。蚊が入っちゃうよ~」 春月は眉をしかめて、開けっ放しになっている玄関のドアを閉めるよう顎で促した。誰のせいで呆けていると思ってるんだ。 「……ハル、お前どうやって入った?」 「ん?玄関から。ちゃんとお邪魔しますって言ったよ。靴も揃えたし」 「そうじゃなくて、その玄関の扉をどうやって開けたのかと聞いているんだ」 僕がやっとの思いで問いただすと、春月はニヤリと笑みを浮かべた。 「なっちゃんさー、ベタすぎ。鍵の隠し場所を植木鉢の底にするのやめたほうがいいと思うよ。今まで泥棒に入られなかったのが奇跡じゃないの? 彼女に合鍵くらい渡してやんなって」 言いながら春月が放り投げたこの部屋の鍵は、慌てた僕の指先をかすめて傘立ての中へダイブした。 「へったくそー」 ケラケラと笑い転げる春月を横目に、僕は鍵探しを後回しにして冷蔵庫の中身を確認した。 買い置きしていた生ビールには手をつけられていない。ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、おつまみの鮭とばがなくなっていることに気付く。僕のひそかな楽しみが……。 「なっちゃーん、なつきー」 ・ ・ ・